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2008年08月08日

B-CAS、NHKの言い分

 前回のB-CAS社 代表取締役社長 浦崎宏氏 に続く、NHKの見解です。
 B-CASの当初の目的は、BSアンテナを1軒ずつ探す手間を省き、BS受信料を払っていない視聴者のテレビの視聴を制限する仕組みでした。
 が、いつの頃からか実情とかけ離れてきたようです。
 その要因にインターネットの急速な発展があります。
 それに対するNHKをはじめとするTV業界の対応の遅れが、事を複雑にしている感が有ります。



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B-CAS社の透明化に努めます
NHK 総合企画室[経営計画]担当局長 土屋円氏 統括担当部長 黒田徹氏

写真●NHK総合企画室[経営計画]担当局長の土屋円氏(左)、総合企画室[経営計画]統括担当部長の黒田徹氏
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 さまざまな噂や批判の声が絶えない限定受信システム(CAS)であるB-CASカードの運営管理を行うビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)。その現状についてはすでに掲載した通り(関連記事)だが,同社はどのような経緯の中で生まれ,今に至っているのか。筆頭株主であり,また年間20億円程度を負担する主要取引先でもある日本放送協会(NHK)の総合企画室[経営計画]担当局長である土屋円氏,総合企画室[経営計画]統括担当部長である黒田徹氏に聞いた。



B-CAS社設立の経緯について教えてください。



土屋氏 2000年2月の会社設立以前から,CASの仕組みをどう活用していくのかの議論がなされてきました。その結果,NHKでは衛星放送契約に関するメッセージ表示を,民放キー局各社は将来の有料放送化をにらんで設立に携わることになりました。



 NHKが筆頭株主となったのは,メッセージ表示機能がすべてのBSデジタル受信機を対象とした業務であることが要因です。有料放送事業者(WOWOW,スターチャンネルBS)の限定受信は受信機購入者の一部しか利用せず,また民放各社は将来的な担保という色合いであったため,利用のグレードはNHKが最も高かったということです。



民放各社の将来的担保とは何ですか。



土屋氏 新たな無料放送モデルであるBSデジタル放送の開始が,従来型の地上波放送ビジネスモデルを脅かす可能性があることを考慮し,CAS方式を用いた有料放送サービスの実施を視野に入れた,と聞いています。結果的にBSデジタル放送はそこまでの成長を見せていませんが,当時は脅威とみる向きもあったということです。



なぜ「株式会社」としたのですか。



土屋氏 歴史的な帰結です。主要業務は有料放送の限定受信でしたが,BSデジタル受信機普及に対する有料放送契約者数は5分の1程度あるかどうか,と見られていました。開始当初の普及状況を考えると絶対数からして少なく,監督官庁が参加・認可して責任を持つほどの公益性はありませんでした。また,組合組織とするには取扱額が大きく,コストセンター的な役割として株式会社の位置づけとなりました。



黒田氏 当初は「CASを使った事業を展開する」という感覚です。NHK,民放,受信機メーカーの3者で株式会社を運営する形にするしかありませんでした。運営上はコストセンター的に経費を抑えることを念頭におきました。


既に普及していた200万台の受信機があり他の選択肢はなかった



2004年から地上デジタル放送を含むデジタル放送にコピー制御が導入されましたが,ここでB-CASを活用することを決めた理由は何ですか。



土屋氏 BSデジタル放送開局特別番組のデジタル海賊版販売で逮捕者が出たことをきっかけに,早い段階からコピー制御の必要性が議論されました。2003年12月の地上デジタル放送開始を前に,地上デジタル放送においても抑止手段としてのコピー制御をやらざるを得ないと。その方法として放送信号を暗号化して何らかの鍵で解く,という技術的ルーチンができあがっていました。そして,すでに200万台程度普及していたBSデジタル受信機を含めてデジタル放送のコピー制御システムを適応するためのベストな方策として,B-CASカードを鍵として利用することになったのです。



B-CAS利用以外に選択の余地はなかったのですか。



土屋氏 すでに出荷された受信機をコピー制御の対象外とするか,または鍵を持たない受信機として利用をやめてもらうか,あるいはコピー制御自体を投げ出すかなど,選択肢はありました。その中でのベストな判断であったと考えています。



B-CASカードにはもともと,デジタル放送のスクランブルを解く暗号解除の鍵が埋め込まれていたということですか。



黒田氏 デジタル放送のコピー制御の検討はBSデジタル放送開始以後であり,よってカード自体も当初からデジタル放送の暗号解除機能を持っていたわけではありません。放送波でのソフトダウンロードの形で,視聴者が不便を感じることなくカードの機能を更新して暗号解除ができるようにしました。



暗号化以外のコンテンツ保護策は検討されなかったのですか。



黒田氏 実施にあたって公募は行いましたが,200万台の販売済受信機を対応させる手立てはありませんでした。



コンテンツ保護実施にはハリウッドの圧力があったとも言われていますが。



土屋氏 NHKには「ハイビジョン画質の作品をコピーフリーで提供することはできない」という話はありましたが,圧力というものではありません。きっかけは,あくまで開局特番時の海賊版販売で逮捕者が出たことによるものです。



守り過ぎたことが「うさん臭い会社」の印象与えた



無料放送の性格から,信号を暗号化すること自体に抵抗はなかったのですか。



土屋氏 物理的手段を介してまでコピー制御をかけることは大きな決断でした。判断にあたり,100回コピーしたメディアを経営者に見てもらうなど,現場から経営側に訴えかけて実現に至りました。



黒田氏 悪意を持たない一般視聴者が簡単にハイビジョン画質のコピーを作れてしまうこと。これが実施における重要な判断材料です。



海外の状況と比べて,放送信号スクランブルは類のない強めの制御方法と言われています。



土屋氏 ハイビジョン画質の地上波無料放送がこれだけ充実しているのは日本だけであり,単純な比較はできないと考えられます。



限定受信にコピー制御が加わり,さらに事業規模が大きくなったことで公益性は強まったと思いますが。



土屋氏 基本的には,株式会社として運営しても不都合はなかった,という判断です。たとえばBS放送の管理と送信を担当するB-SATも株式会社。3000~4000万台の受信機を対象としたパブリックな事業ですが,コストセンターとして運営する限り,特に不都合なく運営されています。メリットという面から,B-CASを社団法人にするなど組織形態を変更する理由が見当たりません。もちろん,新たなコンテンツ保護策(新RMP,関連記事)が断念されたことで将来にわたる重要性が増したことを踏まえて,在り方に関する議論はしています。



なぜ新RMPは断念したのですか。



土屋氏 コストメリットや運用面でのニーズが放送事業者・受信機メーカー間で合致することができなかったことが要因です。特にコスト面では,B-CASよりはるかに安くすることが難しかったと。また時間的制約があることを考えると,やはりB-CAS方式で続行せざるを得ないということになりました。



今後も採用される以上,B-CAS社の透明性をより高めていくべきではないですか。



土屋氏 暗号キーを発行・運営する会社であり,本来は株主さえも明らかにすべきではない,という考えがありました。しかし,あまりに守り過ぎたため,一般視聴者をはじめとする国民の皆様に「うさん臭い会社」という印象を与えてしまった。今後は透明化に努めるよう,B-CAS社ともども心を改めています。




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Posted by 昏君 at 20:08│Comments(1)次世代放送
この記事へのコメント
基本的には,株式会社として運営しても不都合はなかった,という判断です。たとえばBS放送の管理と送信を担当するB-SATも株式会社。 3000~4000万台の受信機を対象としたパブリックな事業ですが,コストセンターとして運営する限り,特に不都合なく運営されています。メリットという面から,B-CASを社団法人にするなど組織形態を変更する理由が見当たりません。もちろん,新たなコンテンツ保護策(新RMP,関連記事)が断念されたことで将来にわたる重要性が増したことを踏まえて,在り方に関する議論はしています。
Posted by Links of London at 2010年06月29日 18:15
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平田義信