2009年01月15日
官民癒着の果てに…。
地デジの普及はこの世界的な経済状態でますます遅れそうです。地デジで獲らぬ狸の皮算用をもくろんでいた放送局も目論見が外れたようですね。事業自体も広告収入は減り、キー局ですら赤字を出し戦々恐々です。
そんな中、総務省と放送局業界の蜜月の関係にも亀裂が見え始めたようです。元々、既得権益を優先した失策に社会情勢が追い打ちを掛けたのですから堪りませんよね。
自業自得の気もしますが、この際本気で政策を一から見直す勇気が必要だと思うのですが…。
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知らぬは一般国民ばかりなり 放送局に免許剥奪がない理由
週刊ダイヤモンド DIAMOND online (2009年01月15日)
世にも不思議な話である。
そのことを、まったく知らされていない一般国民や、他の業界の許認可事業者が聞いたら、「なぜ彼らだけが特別扱いなのか?」という疑問を抱くはずだ。
日本の放送局は、2008年10月31日に、ひっそりと“放送免許”の再免許(事実上の更新)を受けていた。そのことは、当の放送局、親戚筋の新聞社、そして監督官庁の総務省も、あえて自ら言わないようにしているかのようだ。
しかも、今回の再免許は、これまでと違うトピックがあった。全国の放送局が横並びでアナログの放送免許とデジタルの放送免許をいっせいに交付されたばかりか、次の更新までの期限がぴったりと“尻揃え”に調整されたのである。そんな「異例中の異例の事態」(放送業界に詳しい関係者)にもかかわらず、まったくニュースにはなっていない。
放送免許の歴史をさかのぼると、再免許のスパンが「5年に1回」になったのは、1993年からである。アナログ免許は、1998年と2003年、そして2008年10月末日に再免許の時期を迎えた。一方で、デジタル免許は、2003年12月1日から東名阪の放送局とNHKが地上デジタル放送を開始し、その3年後に全国展開となった関係で、各局ごとに時期が微妙にズレていた。
それが今回、アナログ免許は2011年7月24日まで、デジタル免許は2013年10月末日までの5年間と、キー局もローカル局も共通で、まったく同じ条件に揃えられたのである。国策の“完全デジタル化”を進める総務省の強固な意思が込められているアナログ免許の期限が3年弱となっているのは、言うまでもなく、地上アナログ放送の停波のスケジュールに合わせてのこと。
一連の流れを見る限り、総務省は、粛々と計画通りに事を進めているように思える。だが、2008年の再免許がもうひとつ異常だったのは、過去には必ず行われてきた「再免許ヒアリング」(放送局に対する個別の事情聴取)のプロセスがなかったことである。
通常、再免許の時期が近づくと、放送事故や不祥事などでスネに傷を持つ放送局は、ビクビクしながら1年以上前から事情聴取の準備を進める。総務省に対しては、主に①免許期間中の事業継続性、②番組の編成計画を説明し、求められた資料はすべて提出する。
そこには、度重なる不祥事の詳細な調査レポートや再発防止策なども盛り込まれるので、「1つの放送局だけで1000ページ前後の文書になる」(業界紙の元編集者)。
では、なぜ、今回に限り、事情聴取が省かれてしまったのかと言えば、これが総務省の都合なのである。再免許ヒアリングをすれば、ボロが出てしまいかねないからなのだった。たとえば、地デジ推進の立場上、総務省の担当者は、各局に対して「本当に2011年7月24日までにアナログ放送を終了できるのか?」とその根拠を問い質さければならなくなる。
じつは、どの放送局でも、一局当たり約50億円ものコスト負担が必要であるにもかかわらず、利益を生むわけでもない地デジ投資など、ホンネでは望んでいないのである。「とりわけ、地デジ投資だけで、3~5年分の営業利益が吹っ飛んでしまうローカル局は、抵抗勢力になる」(キー局の幹部)。
総務省は、事情聴取で放送局を締め上げようとしても、いつもと違って反撃されてしまいかねなかったので、中止したのだ。ローカル局から、「現実的に、アナログ放送を止められるかどうかは視聴者がテレビを買い換えてくれるかどうかの問題です。地デジの認知度は低いままですが、総務省は、なにをしているのですか?」と切り返されたら、答えに窮してしまう。それが今回、横並びで再免許になった“真相”なのである。
逆に言えば、だからこそ放送局は、どんなに世間の批判が激しくても、放送免許を剥奪される事態を考える必要がない。不祥事続きであっても、免許更新は既定路線になっていたからだ。
現在、総務省とその意を受けた社団法人は、国民には選択肢を与えることなく、CMや字幕などで強制的にテレビの買い替えを促している。地上アナログ放送の停波までは、すでに1000日を切った。
しかし、2008年10月に総務省が発表した緊急調査では、地デジ放送が見られるデジタルテレビの世帯普及率は46.9%であり、依然として目標の50%には達していない。加えて、現行のアナログ放送が2011年7月24日に終わることを知らない人が約4人に1人もいる(認度75.3%)ことから、地デジへの完全移行は危うい状況にある。その日を境にして、テレビが見られなくなる家庭が出れば、世間の非難はすべての発信源である総務省に向かうだろう。
これまで、日本の産業界のなかで、放送局は“特別な存在”とされてきた。だが、そろそろ国は、放送局を優遇し続けていること自体が、静かに国民の反感を買っているという現実を、もっともっと知るべきである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁)
そんな中、総務省と放送局業界の蜜月の関係にも亀裂が見え始めたようです。元々、既得権益を優先した失策に社会情勢が追い打ちを掛けたのですから堪りませんよね。
自業自得の気もしますが、この際本気で政策を一から見直す勇気が必要だと思うのですが…。
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知らぬは一般国民ばかりなり 放送局に免許剥奪がない理由
週刊ダイヤモンド DIAMOND online (2009年01月15日)
世にも不思議な話である。
そのことを、まったく知らされていない一般国民や、他の業界の許認可事業者が聞いたら、「なぜ彼らだけが特別扱いなのか?」という疑問を抱くはずだ。
日本の放送局は、2008年10月31日に、ひっそりと“放送免許”の再免許(事実上の更新)を受けていた。そのことは、当の放送局、親戚筋の新聞社、そして監督官庁の総務省も、あえて自ら言わないようにしているかのようだ。
しかも、今回の再免許は、これまでと違うトピックがあった。全国の放送局が横並びでアナログの放送免許とデジタルの放送免許をいっせいに交付されたばかりか、次の更新までの期限がぴったりと“尻揃え”に調整されたのである。そんな「異例中の異例の事態」(放送業界に詳しい関係者)にもかかわらず、まったくニュースにはなっていない。
放送免許の歴史をさかのぼると、再免許のスパンが「5年に1回」になったのは、1993年からである。アナログ免許は、1998年と2003年、そして2008年10月末日に再免許の時期を迎えた。一方で、デジタル免許は、2003年12月1日から東名阪の放送局とNHKが地上デジタル放送を開始し、その3年後に全国展開となった関係で、各局ごとに時期が微妙にズレていた。
それが今回、アナログ免許は2011年7月24日まで、デジタル免許は2013年10月末日までの5年間と、キー局もローカル局も共通で、まったく同じ条件に揃えられたのである。国策の“完全デジタル化”を進める総務省の強固な意思が込められているアナログ免許の期限が3年弱となっているのは、言うまでもなく、地上アナログ放送の停波のスケジュールに合わせてのこと。
一連の流れを見る限り、総務省は、粛々と計画通りに事を進めているように思える。だが、2008年の再免許がもうひとつ異常だったのは、過去には必ず行われてきた「再免許ヒアリング」(放送局に対する個別の事情聴取)のプロセスがなかったことである。
通常、再免許の時期が近づくと、放送事故や不祥事などでスネに傷を持つ放送局は、ビクビクしながら1年以上前から事情聴取の準備を進める。総務省に対しては、主に①免許期間中の事業継続性、②番組の編成計画を説明し、求められた資料はすべて提出する。
そこには、度重なる不祥事の詳細な調査レポートや再発防止策なども盛り込まれるので、「1つの放送局だけで1000ページ前後の文書になる」(業界紙の元編集者)。
では、なぜ、今回に限り、事情聴取が省かれてしまったのかと言えば、これが総務省の都合なのである。再免許ヒアリングをすれば、ボロが出てしまいかねないからなのだった。たとえば、地デジ推進の立場上、総務省の担当者は、各局に対して「本当に2011年7月24日までにアナログ放送を終了できるのか?」とその根拠を問い質さければならなくなる。
じつは、どの放送局でも、一局当たり約50億円ものコスト負担が必要であるにもかかわらず、利益を生むわけでもない地デジ投資など、ホンネでは望んでいないのである。「とりわけ、地デジ投資だけで、3~5年分の営業利益が吹っ飛んでしまうローカル局は、抵抗勢力になる」(キー局の幹部)。
総務省は、事情聴取で放送局を締め上げようとしても、いつもと違って反撃されてしまいかねなかったので、中止したのだ。ローカル局から、「現実的に、アナログ放送を止められるかどうかは視聴者がテレビを買い換えてくれるかどうかの問題です。地デジの認知度は低いままですが、総務省は、なにをしているのですか?」と切り返されたら、答えに窮してしまう。それが今回、横並びで再免許になった“真相”なのである。
逆に言えば、だからこそ放送局は、どんなに世間の批判が激しくても、放送免許を剥奪される事態を考える必要がない。不祥事続きであっても、免許更新は既定路線になっていたからだ。
現在、総務省とその意を受けた社団法人は、国民には選択肢を与えることなく、CMや字幕などで強制的にテレビの買い替えを促している。地上アナログ放送の停波までは、すでに1000日を切った。
しかし、2008年10月に総務省が発表した緊急調査では、地デジ放送が見られるデジタルテレビの世帯普及率は46.9%であり、依然として目標の50%には達していない。加えて、現行のアナログ放送が2011年7月24日に終わることを知らない人が約4人に1人もいる(認度75.3%)ことから、地デジへの完全移行は危うい状況にある。その日を境にして、テレビが見られなくなる家庭が出れば、世間の非難はすべての発信源である総務省に向かうだろう。
これまで、日本の産業界のなかで、放送局は“特別な存在”とされてきた。だが、そろそろ国は、放送局を優遇し続けていること自体が、静かに国民の反感を買っているという現実を、もっともっと知るべきである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁)
Posted by 昏君 at 21:36│Comments(0)
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